日本での記念切手収集のブームは、1960年代~1970年代にかけてがピークだったようです。
父親から聞いた話によると、その頃は猫も杓子も収集をしていて、趣味といえば記念切手収集と言われるほどのブームだったそうです。
新しい記念切手が発売されると、その都度、母親が郵便局に買いに行っていたそうですが、郵便局の窓口に列をなしているという光景も見受けられたそうです。
今では信じられない光景ですが、当時としてはそれぐらい記念切手は価値のあるものだったのでしょう。
やがて記念切手の収集は父親から兄に受け継がれ、兄が集め始めました。
当時、収集家の垂涎の的で最も価値のある記念切手として、
『見返り美人』
『月に雁』
『ビードロを吹く娘』
『市川蝦蔵』
の4つがありましたが、その中の『月に雁』を兄がお小遣いを貯めて買ってきたことを覚えています。
当時いくらで買ったのかまでは覚えていませんが、現在でも1万数千円~2万数千円で販売されており、依然価値の高いものです。
その後、兄も収集に飽きたのか、兄の後を受け継ぎ私が少しづつ買い足しながら増やしていきました。
私が集めていた頃は、すでに記念切手ブームのピークも過ぎていたのですが、それでもまだ収集していた当時の私の原動力は、やはり兄の『月に雁』ように、「記念切手は持っていればそのうち価値が上がってくる」という漠然とした動機だったように思います。
多くの収集家も単に集めるというよりも、価値を高める投機的な動機の方も多かったのではないかと思います。
それから十数年後の現在、記念切手の価値はどうでしょうか。
今回、切手買取をしてくれるところを探す中で、ある買取店の方のお話によると、記念切手のそうした投機的な価値は、現在ではほとんどないとのことでした。
上にあげました、高値のいわゆるプレミアと呼ばれるもののうち、「見返り美人」や「月に雁」などはかろうじて額面以上の金額で買い取るそうですが、「ビードロを吹く娘」、「市川蝦蔵」については、ほぼ額面通りの買取金額にしかならないそうです。
それぐらい、記念切手自体の価値が下がってきているということです。
なぜかというと、当時の記念切手ブームの頃に集めていた収集家が高齢になるに従い、収集品を手放すようになり、市場にはその頃の記念切手が飽和状態となっており、そのお店でも在庫はダブついている状態で、当時は額面以上で販売していたものも今では額面以下で販売しているものもあるそうです。
さらに、携帯電話やメールの普及などで、手紙や封書で郵送するという機会が減少し、ますます切手自体の需要の減少傾向に拍車がかかり、今後も価値の下落は続いていくだろうということです。
記念切手を売るなら、額面の半額でも買い取ってくれればいい方だということで、まだ少しでも価値のあるうちの早い方がいいとのお話でした。